「女性医師たちは、どうして出産すると働き続けられないの?」
ある診療部長の男性医師から聞かれたことがあります。とても見込みがある研修医さんが面接に来て、後期研修医として採用したにもかかわらず、結婚や出産を理由に断られてしまったのだそうです。

私は「働きたくない」「楽をしたい」と思っているのではなく、「ほかの男性医師や同僚に迷惑をかけたくない」「自分が休む分の負担をかけさせたくない」「自分のポストは確実に働ける医師の方が相応しい」などと思う人が多いのではないでしょうか、と答えました。女性の方が真面目で義理堅く、責任感が強い人が多いのではないでしょうか

○母親はマルチタレント
そして、一度フルタイムの職を外れてしまうと、「こんな自分は医師ではない」「バリバリのキャリアを積む医師に比べて、自分は何とお粗末なことか」と考え、胸を張って自分が医師だと話せなくなってしまいます。そして、年月が経っていくと、ますます医療の世界に戻れなくなってしまいます

私も、保育園のママ友として顔見知りだったにもかかわらず、医師仲間ということを長い間知らずに過ごしていた友人が何人もいます。お互いに「医師はバリバリ忙しく飛び回るべき」という思い込みに縛られて、パートタイム勤務では恥ずかしくて「医師です」と名乗りにくいのだと思います。

母親業は、保育園選びから毎日の食事まで広範囲にわたる物事を取捨選択し、決定していかなければいけません。そのためのエネルギー、危機管理、とっさの対応、銀行や役所、公的機関とのロジスティクス(事務処理)、段取り、人間関係の調整、家族や親類との「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」、その全てにわたってマルチタレントな才能が求められます。そう考えると、専業主婦の方はもっと大変です。私のように家事の手抜きをする言い訳が出来ないのですから…

○相乗効果で効率良く
だから、家庭と仕事の「両立」を目指すのではなく、その時々で比率を変えながら、自分の中の異なる立場、異なる役割がそれぞれ相乗効果を出しあって効率を良くすることが大切だと思うのです。例えば、私の場合、平日の昼間に開催される学級委員の集まりにはあまり顔を出せませんが、その分職場のすきま時間に配布物などの書類作成。封筒に詰める作業を担当するここともあります。そのやり取りの中でママ友が増えるとさらに弾みがつき、小学校でのお付き合いがもっと楽しくなります。

仕事と家庭、社会貢献の相乗効果が生み出されると、同じ時間でも二種類、三種類のことが出来るのではないでしょうか。受け身にすぎなかった小学校の行事も、自分が準備に関わっていることで積極的になれ、顔見知りが増えたおかげで楽しくなり、今まで知らなかった世界が広がりました。「母親として、いろんな立場に身をおけるのはとてもラッキーだなぁ」と思っております。