○子育て支援は今が正念場
PCATの被災地支援を通じて、人材集め、資金集めの重要性と難しさも知りました。現在、震災から1年が経過し、最初に求められていたような訪問診療のニーズはなくなりましたが、子育て支援の重要性はこれから、特に母親の心をいたわり、評価する取り組みはここからが正念場です。

母親、妊婦さんや子どもたちの報道や対策は放射能汚染に関するもののみに限定され、放射能被曝に対する母親の心配という問題に矮小化されがちです。しかし、将来の納税者でもあり、復興後の街を担っていく子どもたちの問題は、国家的な視点から考えなければいけません。

災害直後に妊産婦及び子どもたちが顧みられなかったことがどのような長期的な影響を及ぼすのか。悪い影響が出ている、あるいは今後出る可能性があるのであれば、どのようにして食い止められるのか。私のように少子化研究をしてきた者にとっては、女性や妊産婦、若い子どもに対する国民のあり方を問うような、解決方法を見いだせるような研究をしたいと思わされました。

○皆が手を繋いでゴールする時代に
この大震災で、日本が一番大きく変わった点は何でしょう?

いろいろあるかと思いますが、朝日新聞の世論調査では「日本社会のきずなを実感した」と回答した人が85%、「仕事を通じて社会のためになることをしたい」「人の役に立つことをしたい」と答えた人が73%との結果が出ました。また、団体を通じて寄付をした人が56%、街頭募金に寄付をした人が42%、被災地の産品を購入した人が29%、となり、「特に何もしなかった(12%)」を大きく上回りました。

日本を元気にするために、社会を良くするために、できる人が出来ることをして支え合う、誰かが飛びぬけて勝ち組になるのではなく、皆が手を繋いでゴールインする、次はこういう時代が来るのではないでしょうか

私にとって、被災地のお母さんたちが直面している問題は、全国の子育て世代が抱えている問題が露呈したものとして受け止めています。被災地の子育てを考えることは、平時の全国の子育て環境を考えることにつながります。次世代への思いを込めて、引き続き、息長く被災地のことを思い、祈り、尊重し、寄り添う姿勢を続けていきたいと思っています。

謝辞(敬称略):
太田寛、大塚恵子、遠藤ゆかり、春名めぐみ、早川幸子、池田裕美枝、新井隆成、藤岡洋介、綱分信二、渡辺亮、橋口佐紀子、日本プライマリ・ケア連合学会被災地支援チーム(PCAT)、日本助産師会、東京都助産師会、東京里帰りプロジェクト、AmeriCares、UNICEF